認証業務

対談:“物流施設の用地取得と土壌汚染対策“
株式会社シーアールイー代表取締役社長:亀山忠秀様 × 当協会代表理事:光成美紀

物流施設用地2物件で、土壌汚染対策後の土地について認証を取得した株式会社シーアールイー代表取締役社長:亀山忠秀様にお話を伺った。

光成:貴社には、私どもの認証を2物件についてお取り頂き、ありがとうございました。いずれも工場跡地を物流施設に開発されていますが、貴社の事業概要と工場跡地の購入の際の課題などをお話し頂けますか?

物流施設用地の購入と土壌汚染対策

株式会社シーアールイー代表取締役社長:亀山忠秀様 亀山:当社は物流不動産に特化した不動産会社で、物流不動産にかかわる管理、開発、賃貸など、トータルサービスを提供しています。その中に、中型から大型の物流施設を開発する事業も含まれます。

首都圏の主な物流適地として、圏央道や外環道周辺が挙げられます。圏央道の周辺はもともと開発されていない畑や山林、農地等が多い一方、外環道の周辺はもともと工場で使われていた土地が多い傾向にあります。製造業の工場などは、海外移転や産業構造の変化でその後使用されなくなって売却に出されているのですが、これらの土地は交通の利便性がよく、工場で働いていた人がいた場所なので、通勤等にも比較的便利で、昨今の人手不足の状況でも比較的雇用を確保しやすい環境が整っています。一方、これらの工場は高度経済成長期から操業していて、土壌汚染などの調査や対策が必要なケースが多いです。

光成:土壌汚染対策を、売主側ではなく、買主である御社が実施されるケースも増えているのでしょうか?

亀山:当社では、土地を利用する買主が、その土地の利用目的に沿って浄化対策をする方が望ましいと考えています。というのも、売主側が土壌汚染対策を実施する場合、その後の土地利用にかかわらず土壌汚染対策を実施するので、対策が過剰になりがちだと考えています。また、製造業の方々などは、長年その土地で事業を営んでいて、頻繁に土地を売買するわけではないため、土壌汚染対策の経験はそれほど多くないのが実情です。そのため、土壌汚染リスクに敏感となり、法的には必ずしも要求されていない土壌汚染の完全除去を実施するケースが多く、社会的コストの増加につながっていると思います。

代表理事 光成 美紀

光成:これまで、国内の土壌汚染対策は、汚染土壌の全量掘削除去がメインで、必ずしも法的に求められていない場合にも汚染土壌の全量掘削除去が行われがちでした。

亀山:確かに、当社もかつては、工場跡地等を購入する際には、完全浄化が当たり前だと思っていましたし、保険のようなサービスも購入していました。そうすれば安心だと思っていたのです。しかし、土壌汚染や土壌汚染対策法の理解を深め、様々な浄化工法を知るにつれ、物流施設として使用する際には、法律上求められる適切な措置を講じればよく、汚染のレベルによっては完全浄化をする必要はないのではないか、と考え方を変えていきました。

利害関係者の多い開発事業においては、当社のみならず全ての利害関係者に土壌汚染という言葉の拡大解釈や過剰反応が起きないよう、適切な認識をもっていただくことに気を配っています。土地が“安全”な状態であることを第三者の専門家が確認、認証をしてくださるAPRのサービスは、開発事業にかかわる関係者と共通の指標で土地の状態を確認していただけるものだと思い、当社の開発物件(2物件)で認証を取得させていただきました。

土地取引における土壌汚染対策:現在までの動き

光成:日本では、土壌汚染対策を過剰に実施することが慣例化しすぎてしまっていますね。

亀山:土壌汚染対応に馴染みがない場合、仲介業者やコンサルタントの助言のもと、慣例に従うことが多いような気がします。

土壌汚染対応でも、汚染状況や土地利用の目的に応じて、発注者側の意図を組み、幅広い選択肢の中から最適なソリューションを提供してくださる企業が増えていってほしいです。

光成:最近は、不動産ディベロッパーのなかでは、必ずしも完全浄化は必要ないという認識が徐々に増えつつあるというように見受けられますが、業界全体の動きをどのようにご覧になりますか?

亀山:完全浄化がすべてではないという認識は徐々に浸透しつつあるかなと思います。ただし、完全浄化をしない場合、完全浄化以外の適切な工法を選択する知識やスキルの向上はこれからだと思っています。

光成:今回(2017年5月)の土壌汚染対策法の改正では、不動産業界からの要望もあり、過去に対策をした土地、つまり指定区域を解除したという情報等も入手しやすくなるように、情報が整備される方向になっています。そうしますと、過去のいつ時点で土壌汚染の掘削除去をしたかということも明確になりますので、新たな物質が追加される前の掘削除去の措置について、その時点での完全浄化という評価がなされ、その後の対象物質等を踏まえた現時点の不確実性が残る可能性もあります。

また不動産鑑定士協会連合会では、汚染地の評価方法を再検討する小委員会が開かれています。土地の使用価値をベースにして、評価されるようになれば、掘削除去をして完全に浄化した場合と封じ込め等の措置に留めた場合のいずれであっても法令に基づく適切な対策でありその後の土地利用が倉庫等の非居住用に供されれば、土地のバリューに今のような大幅な差が生まれなくなる可能性もあると思っています。

株式会社シーアールイー代表取締役社長:亀山忠秀様

亀山:その通りだと思います。不動産の鑑定では、「最有効使用」に基づいた価格を求め、必要な減価をするので、現在のように完全浄化をベースにした掘削除去費用を減価する必要はないと思います。

光成:APR認証を取得された土地において開発した物流施設2物件は、いずれも稼働されているのですか?

亀山:2物件とも、既に竣工・稼働済みですが、いずれも建物の環境性能で評価し格付ける手法であるCASBEEはAランクの認証を取得しています。

光成:土地・建物共に認証を取られたということですね。

亀山:はい、当社が開発する物流施設では環境や省エネルギーに配慮した施設づくりを行い、CASBEE認証やBELS評価等を取得しています。土壌汚染に関しては、われわれ不動産会社では、エンジニアリングレポートを見るのですが、ここに書かれている土壌汚染に関する記述は、土壌汚染が「ある」又は「ない」、「ない」ということが断言できない場合には、土壌汚染の可能性が「高い」「低い」、場合によっては、「極めて高い」とか「極めて低い」といった形容詞表現で、安全かどうかの判断が難しい状況です。

しかし、今回取得したAPRの認証は、この土壌汚染の状態は、土地利用上は“安全である”ということを第三者が確認してくれるので、土地取引にかかわる関係者によって有益なものではないかと思います。

昨今土壌汚染について「安全」か「安心」かという議論を耳にしますが、「安心」は感覚的なものなので評価がしにくいのですが、「安全」かどうかは定量的な裏付けのもとでの判断が可能ではないかと思っています。

光成:私どもの協会の「安全」の判断は、土壌汚染対策法の目的でもあるように、土地利用上、健康被害のおそれがないということと、土地取引上の安全性として、敷地外に拡散がないことという二つの視点を評価しています。

今後の認証や政策への期待

亀山:APRの認証が、土地取引の関係者、融資機関等にとって判断指標となるくらい、信用度や認知度が向上することを期待しています。また、認証の発行プロセスを利用者目線で再整理することで、より使いやすいものになるのではないかと思います。

代表理事 光成 美紀

光成:ご意見ありがとうございます。法改正を受けて、認証をより使いやすいものにできるように、現在、研究会を開催していますので、来年の3月に向けてより良い仕組みになるように枠組みを再度整理していく予定です。

亀山:国内ではまだ土壌汚染のある土地を売却しにくいと思っている企業も少なくないと思います。立地条件の良い土地にもかかわらず、やむを得ず駐車場やグラウンド等として自社またはグループ会社で利用しているケースも散見されます。こうした土地が、認証や保険などを通じて売却しやすくなれば、土地の有効利用が促進されると思います。

光成:日本も空き家や空き地対策が徐々に提案されていますが、アメリカのようにブラウンフィールド政策が拡充されるといいですね。

亀山:そうなるといいと思います。日本の限られた国土において、すでに電気やガスなどのインフラが整っている工場跡地は、積極的に有効利用していく必要があります。当社では土壌汚染のあるなしにかかわらず、これからも物流適地であれば施設開発を進めていきます。

株式会社シーアールイー代表取締役社長:亀山忠秀様